宇宙科学研究所にて [宇宙のこと]
タツオ君の家の離れはアトリエで、別名「宇宙科学研究所」という。何もエイリアンである僕がやってきたからついた名ではない。タツオ君とサキちゃんが宇宙の百科事典やアダムスキーの本やら、うさんくさい宇宙人本などをならべ、アトリエで楽しめるようにしてあるので、二人はそこを「宇宙科学研究所」と呼んでいたのだ。タツオ君は絵を描いていることがほとんどだったが、サキちゃんがそのそばで星座の図鑑をめくっているというのは、日常の光景だった。
「でも、うちに宇宙から猫がくるとは思わなかったよね」とサキちゃん。
「宇宙の人間だけどね。」と僕。
「ピーチの星には猫の人ばかりいるの?サキも猫の星にいってみたいなー。」
「ではいつか行こう。これは約束する。」
「ほんと!?あのUFOサキも乗れるの?」
「100人でものれる大きさになれる。」
「えー、すごい。今行きたい。」
「まだだ。パスポートの申請ができないとね。」
「それいつ?」
「サキちゃんの調査資料が整うまでだ。」
「それいつ?」
「難しいことではないんだが、時間がかかる。サキちゃんの中で、僕たちに対する理解が深まってくると許可が下りる。それまでは普通に暮らしているしかないんだ。あわてても意味がないし、努力しても無駄だ。僕と一緒に暮らしているなかで自然に宇宙の法則が身についてくるから、そうしたら連れて行ってあげられるよ。逆に今連れて行っても、サキちゃんにとっても、僕らエイリアンにとってもメリットがあるとは言えない。何事も準備が必要だし、時間をかけて行われるべきものなんだ。」
「つまんないなー。」
「その『つまんない』がなくなる時、サキちゃんはもう僕らの星の土を踏んでいるかもしれない。その時は突然来るかもしれない。」
「ふーん。でもそれがいつなのか知りたいなー。」
「いつかなんて無意味さ。」
「サキがおばあさんになってから?」
「きっとそんなに先ではないと思うね。」
「あー、早くピーチの星に行きたいな。だめなら月でも金星でもいいな。」
「まあ、あまりあせらないで、学校の宿題を毎日やることだね。」
「いい子にしていれば行けるってこと?」
「それとも違うな。だいいち、サキちゃんや他の地球人が言ういい子ってやつは、本当はちっともいい子じゃない。」
「ピーチの世界はあべこべの世界なの?」
「あべこべではないな。」
「何だかわかんないな。ピーチの言うことは。」
「わからなくていいんだよ。今はね。さあおやつでも食べなさい。」
地球人の子供たちは可愛い。やわらかくて、野性的で、せわしない。
窓の外を見ると、春の夕暮れが近づいていた。暖かな西日に宇宙科学研究所の影がのびていた。
「でも、うちに宇宙から猫がくるとは思わなかったよね」とサキちゃん。
「宇宙の人間だけどね。」と僕。
「ピーチの星には猫の人ばかりいるの?サキも猫の星にいってみたいなー。」
「ではいつか行こう。これは約束する。」
「ほんと!?あのUFOサキも乗れるの?」
「100人でものれる大きさになれる。」
「えー、すごい。今行きたい。」
「まだだ。パスポートの申請ができないとね。」
「それいつ?」
「サキちゃんの調査資料が整うまでだ。」
「それいつ?」
「難しいことではないんだが、時間がかかる。サキちゃんの中で、僕たちに対する理解が深まってくると許可が下りる。それまでは普通に暮らしているしかないんだ。あわてても意味がないし、努力しても無駄だ。僕と一緒に暮らしているなかで自然に宇宙の法則が身についてくるから、そうしたら連れて行ってあげられるよ。逆に今連れて行っても、サキちゃんにとっても、僕らエイリアンにとってもメリットがあるとは言えない。何事も準備が必要だし、時間をかけて行われるべきものなんだ。」
「つまんないなー。」
「その『つまんない』がなくなる時、サキちゃんはもう僕らの星の土を踏んでいるかもしれない。その時は突然来るかもしれない。」
「ふーん。でもそれがいつなのか知りたいなー。」
「いつかなんて無意味さ。」
「サキがおばあさんになってから?」
「きっとそんなに先ではないと思うね。」
「あー、早くピーチの星に行きたいな。だめなら月でも金星でもいいな。」
「まあ、あまりあせらないで、学校の宿題を毎日やることだね。」
「いい子にしていれば行けるってこと?」
「それとも違うな。だいいち、サキちゃんや他の地球人が言ういい子ってやつは、本当はちっともいい子じゃない。」
「ピーチの世界はあべこべの世界なの?」
「あべこべではないな。」
「何だかわかんないな。ピーチの言うことは。」
「わからなくていいんだよ。今はね。さあおやつでも食べなさい。」
地球人の子供たちは可愛い。やわらかくて、野性的で、せわしない。
窓の外を見ると、春の夕暮れが近づいていた。暖かな西日に宇宙科学研究所の影がのびていた。
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