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次なる進化の過程 [絵画作品紹介]

4月にしては大変暑い日となった。サキちゃんとサトくんは、マコさんの買い物中留守をあずかり、家中の掃除をした。子どもにとってもお手伝いをするのはうれしいらしく、夜になってもサキちゃんはずいぶんときげんがよかった。サトくんはつかれたのか、8時頃から居間で眠ってしまった。

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▲無題


「このごろマーカバに乗れなくなったんだが…。」
研究所の机のまえで足を組んだ姿勢のタツオくんが、ふいにつぶやくように言った。
「基本的には君が体外離脱しない限り、マーカバには乗れない。」
僕はそっけなく答えた。
「体外離脱…、それもできない…、僕の体に何かしたか?」
「いや。」
「そうか…」
タツオ君は不満げに壁にかけた自分の作品を見詰めた。

実際に僕はタツオ君に何もしていない。だが言わなかったことが一つある。それはタツオ君がマーカバに乗れなくなった理由を知っているということだ。地球人のように、転生する星人には必ず指導霊が何体かついている。タツオ君の場合、やはりすぐれた霊が彼を導き、守護しているのだが、中でも最も強力な天使級の霊が、タツオ君の体外離脱を止めているのだ。マーカバに乗ろうと乗るまいと、体外離脱して赴く世界は、いかに酷似していようとも、その世界そのものではない。うすい層を隔てた形で垣間見ているだけなのだ。だから当の世界のほうでは、タツオ君が訪れたとしても、その気配は感じるかもしれないが、実際には何の影響も受けない。実際に世界とコミュニケートするまでになるには、ちょうど僕の体がそうであるように、肉体波動が光と同レベルにならないといけないのだ。地球ではこれをライトボデイと呼ぶ人たちがいる。タツオくんは、少年時代から霊眼が発達し、目を閉じていても外界が見える上、何の訓練もせずに、かなりの自由度で肉体を出たり入ったり、あるいは意識体のまま壁をぬけたり、空を飛んだり、高速で移動したりできた。これらは霊的な次なる次元へのスタートラインにすでに立っていることを意味している。だからこそ僕とロザリオは彼にマーカバを埋め込んだのだ。しかし、タツオ君ももうマーカバ遊びをしている段階でもないと、彼の指導霊は考えている。マーカバ遊びも、慣れてくると、TVを見るようなもので、慢性化し、傍観者の立場に甘んじてしまうようになる。というわけで、今回僕らはマーカバをタツオ君から取り上げもしなかったし、体を操作したりもしていないが、タツオくんの次なるステップのために、新たな訓練が開始されたので、あえて指導霊である天使に任せているというわけだ。

現にタツオ君は、考え込んでいるよりも行動していることのほうが多くなった。今までは瞑想状態でじっと動かなくなることが多かったが、今はひっきりなしに何かをしていて、夜になるとスイッチが切れたみたいに眠ってしまう。それでいいのだ。そうやって献身的に働くことで、進化の邪魔になる自我が消滅してゆく。すべての自我が消えてしまうと、より大きな自我と接続して、全く桁違いの大きな仕事を成せるようになる。

今日も、夜が山里を飲み込んでしまった。小さな虫の声が聞こえる。黒くうごめくものをよくみると、テラスを人差指ほどの長さのムカデが、身をくねらせて這っているのだった。

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かぴー

自我をなくして、より大きな仕事を成す。
老子も同じようなこと言ってましたねぇ。彼も宇宙的な哲学者です。
by かぴー (2009-04-12 18:37) 

peach

★かぴーさん。ありがとう。老子と来ましたネ。そうなんです。歴史をみると、あらゆるもっとも偉大な師が、不思議なことに自ら何かを成そうとはしていないようなのです。
by peach (2009-04-12 21:23) 

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