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春の雨 [絵画作品紹介]

春の湿潤な大気が、ほんの少し冷たい雨を運んできた。最近、宇宙科学研究所のまわりで鳴くようになった虫たちも、今夜はこの雨音を聞きながら、じっと何かを考えているかのように、声をひそめている。雨は雨の思い出をよみがえらせる。雨の日はじっとして家の中ににいるものだ。地球に来て、何度こうしてじっと雨音の中に貝のように閉じこもって過ごしたことだろう。雨は小さな水流となり、研究所の脇にある小さな堀に落ち、やがて小川へ流れ込む。小川はやがて一級河川に合流し、大海へ流れ出る。その頃には大海の上空に輝く太陽に照らされ、また大空へと昇ってゆくのかもしれない。こんな水あそびを考えた神は、僕たちの耳や目を通じて、それをゆったりとした面持で楽しんでいる。そして神は、白い髭をはやしたり、柄の曲がって年季の入った杖をもって椅子にもたれかかった老人ではないはずだ。そう、実体のない意思が、不可視の光が、純粋なる喜びが、今日も世界を満たしている。そこかしこに、ほら、見えるだろう?

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▲雨だれの椅子

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