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暗黒の二年間 1 [音楽]

前回のブログ再開のごあいさつで、僕はブログを更新できなかった理由として、ある場所に幽閉されていたという事実をコメントした。何故そのようなことになったのか?

2009年も暑い夏だった。ホームステイ先のタツオ君の家では特に変わりのない、平穏な日々が続いていたが、以前の記事でも書いたように、当時タツオ君の進化のレベルはかなり進んできており、喜ばしいと同時に、かなりデリケートで微妙な時期ではあったのだ。しかし取り巻く現実はあまり芳しいとは言えなかった。なぜなら、近いうちにこの日本で大災害が起こるという情報が故郷のチームメイト、ロザリオから送られてきていたからだ。



「………最悪だな。回避の道はないのだろうな?」
僕はため息交じりに尋ねた。会話の相手はロザリオである。
「むろん最善は尽くす。しかし完全に我々のコントロールできる次元を超えているんだ。君は地球の『津波』を実体験として知らないだろう?」
「スマトラ島沖地震の時はもう地球に来ていたから、映像では見ている。あの時も限られた人たちだけが、僕らの送る巨大津波のビジョンをキャッチすることが出来たきりで、その他は実質指を咥えて見ていた状態だった。あの年のクリスマスのことを思い出すよ。サキちゃんやサトくんは例によって幸せいっぱい、という感じで大はしゃぎしているのに、事情を知っているタツオ君は2日後に起こる大惨事のことで頭がいっぱいで、浮かない顔をして不味そうにケーキを食べていたっけ…。」
ロザリオはさもありなんと相槌を打ちながら言った。
「今回は日本ということで、明治三陸地震を上回ると予知されている。内陸部にいる君たちにも深刻な影響が出るかもしれない。程度の問題として、停電、流通のストップなどによる物資の不足がどれくらい続くかということだが…。」
「いや!それよりも実際に被災する地域を何とかできないのかと言っているんだ?」
僕は少し食ってかかるように言った。
「ピーチ、僕たちが実際に出来るのは、いまのところ地球人にインスピレーションを与えることだけだ。それは最前線で任務に就いている君自身が、いちばんよく知っている筈だろう?」
「……………………。」
僕は言葉に詰まり、ロザリオはその沈黙を受け止めるようにして言った。
「僕らの全計画を早める必要があるのかも知れないな。」
「……と、いうと?」
「君の場合で言えばだが、タツオ君への最終的な処置を繰り上げるということだ。見たところ相当に力をつけてきている。そろそろ耐えられるころなんじゃないかな。」
僕が考え込んでいると、ロザリオは続けた。
「判断は君に任せる。タツオ君やご家族の皆さんに危険がないようにしてくれ、そして君にも。」
僕は「少し考えさせてくれ。」と言って通信を切った。

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