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暗黒の二年間 12 [音楽]

「上出来ってなあ。人をお前の作品みたいに言うなよな」とタツオ君がむくれた。
「ああ、すまない。癖なのだ。君なら分かっている筈だ」
「わかっていても地球人には礼をもって接しろ」
「はいはい、普通の地球人にならそうするから」
普通の───、そう言ってなんだか、僕は切なくなってしまった。

僕らに似た素質と能力を、幾多の転生を経て、自ら作り上げてしまったひとりの地球人存在。結局それが災いしてこんなことになっているのだ。本当はこんな日が永遠に来ないことを願っていた。だが、この日のために僕はチームから送り出されてきたのだ。そして…かくも進化を遂げた地球人存在が、彼一人の力で生きてゆくのはもはや危険なのだ…。そう自分に言い聞かせて見るが、甲斐もなく、進化がなぜそんなにも大事なのか?という本末転倒な、感情的疑問すら沸き起こってくる。

でも結局だれでも人は、いつかは十字架にかけられる日がやってくるのだ…。



「しかし、失敗したりするのはまあ論外としても、お前がちゃんとおれの身体に入ってこれた場合…その時おれはどうなるんだ?」
「うん。最重要ポイントだよね───。普通ウォークインと言うと、瀕死の人間などに合意、または非合意で、その身体に浸透し、地球人のもつ三重体の中でも、われわれと同種の微細なエネルギー体に存在する、いくつかのセンター同士を接続してしまうのだ。たしか地球人の一部では、チャクラとか言っているだろう。それがそのセンターだ。それでウォークイン存在による肉体のコントロールが可能になる」
「コントロールということは、こちらに選択権はないのだな」
「その通り。それがウォークインの特徴だ」
「おれに意識は残るのか?」
「残るとも。鮮明にね」
「ということはおれに、傍観者になれといっているわけだよな」
「極論すればそういうことだ」
「それって随分と退屈なんじゃないのか?または、はがゆいとか…」

僕は予想された質問に対し、首を横に振った。


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haku

The Wall 久しぶりに聴きました
いつもながら、シチュエーションにあった選曲ですね♪
by haku (2011-07-23 08:31) 

peach

★hakuさん、どうもありがとうございます。
先日、作家の阿部公房について調べていたら、
ピンク・フロイドのファン、と出ていました。
また氏は、日本で最初にシンセサイザーを所有した一人、
だった、ということです。意外でした。
by peach (2011-07-24 10:19) 

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