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暗黒の二年間 25 [音楽]

「おとうちゃん、ピーチがいないんだけど…」
翌日、会社から戻った僕たち(タツオ君+僕ことピーチ)は、サキちゃんからさっそく予想通りの質問を受けた。
「あいつか?あいつは何か急用だとかで故郷(くに)に帰るって言って、ゆうべ行っちゃったぞ」
「ええっ?どうやって?宇宙船乗ってったの?」
「いや。どうもあれで帰るのは無理らしいね。この太陽系あたりをうろうろするくらいのエネルギーしか残ってなかったようだから」
「そうでしょう?だって前サキが乗せてもらったときに、『燃料が少ないから遠くまで行けない』と言ってたんだもの。帰れるわけないと思ってたのになあ」
「迎えが来たのさ…」
「もうっ!どうして教えてくれなかったの?」サキちゃんは憤慨して言った。
「すぐ戻るんだから、知らせなくていいと言われていたんだ」
「それでも一言くらい言ってゆけばいいのに」
「ピーチいつ帰ってくる?」さっきからサキちゃんの後ろで突っ立って聞いていたサトくんが口をはさんだ。
「そうだな…三、四ヶ月って言ってたよ」
そう答えると、サキちゃんが目を丸くして叫んだ。
「そんなに!あーあ、宿題教えてくれる人がいなくなっちゃった!」
正直この種の反応が返ってくると思っていなかった僕たちは
「そっちかよ」と言って、その場を終わらせた。これでしばらくは落ち着くだろう。


The Mac Coys - Hang On Sloopy 投稿者 scootaway

僕たちにとって問題なのはむしろ会社の方だった。僕もこの日、会社というものに初めて出向いたわけなのだが、実際行ってみると、今まで聞いていた以上に厄介な代物であることがわかったのだ…。何と形容しよう?現在の地球が同じように厄介な状態にあることは、この回想編より以前から語って来た通りだ。そしてその縮図とでもいうべき混乱状態が、野放しの状態でそこにはあった。無論、定められた「規則」なるものがあったし、推奨される「正義」なるものがあった。しかしそれらすべてが僕たちの視点から見ると、誤った土台のもとに突貫工事で構築された、いわば「幻影」なのだった。それは国家と同じ混乱状態とも言えた…。僕や故郷の人々、そして地球人で言えばタツオ君のような人たち…、そういった間柄で通用する当たり前の理性も、美しい論理性も、そこではほとんど通用しないのだった。タツオ君の意識のうしろにあっても尚、そこに飛び交う負の波動は、この身体にしがみつく僕の腕を痛めつけた。正直、タツオ君には早くけりをつけてもらいたかったのだが、それでもこの時はまだ、なんとか乗り切れるつもりでいたのだ…。

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haku

「負の波動」ですかぁ...
分かります ^^;
by haku (2011-08-23 08:08) 

ともちん

暗黒の二年間、読むのがやっと追いつきました。
今一番最初から読ませて頂いています(^^)
どんどん切ない展開になっていますね。でも、先が楽しみです。
by ともちん (2011-08-24 03:59) 

peach

★hakuさんありがとうございます。
お互いビジネスマン経験で身に沁みていますよね~。
こういった内容は、これからもオーバーに書くつもりはなく、
ただ一般的現実として象徴的に指摘できればと思ってます。
当たり前だと思っている人も多いわけで…。
by peach (2011-08-24 17:52) 

peach

★ともちんさん、ありがとうございます。
いやあ、ほんとありがたいことです。前半はストーリー性に乏しく、
日記風で記事も少ないですが、伏線になることが盛り込んであります。
タツオ君の旧作絵画作品が見られるのも「暗黒の二年間」より以前
となりますので、是非いろいろな意味でお楽しみ頂けたらと思います。
by peach (2011-08-24 17:58) 

DEBDYLAN

名曲です♪

by DEBDYLAN (2011-08-24 22:38) 

peach

★DEBDYLANさん、ありがとうございます。
これも、いろんな人がカバーしてますよね。
この場合、♪~Hang on Peach,Peach hang on!ですかね(笑)!
by peach (2011-08-24 23:25) 

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