SSブログ

暗黒の二年間 36 [音楽]

翌日は休みだった。良く晴れた日で、山間部のこの地域も小春日和のような暖かさに包まれていた。しかし昨日の不意の出来事が、タツオ君を深刻にさせていた…。



「マコ…、僕は少しおかしいのかな…?」タツオ君はダイニングテーブルの前に座ったまま、そう切り出した。マコさんは洗い物をしていた手をとめて向かいに座ると、タツオ君から、記憶をなくしたらしいという内容の話を聞いた。
「普通じゃないわね…」
「この間の鼻血のときのことも、何故覚えていないのかって言ってたよな?」
「そうなのよ…、あれだけ大騒ぎして…それも別人みたいに…」
「そうか…」
「一度病院に行きましょう?」
「その方がいいのかな…いろんな人に迷惑をかけているみたいだし…」
「…私も一緒に行くから」
「いいよ、一人で行くよ」
「だめよ、記憶をなくしている間のことをうまく説明できないでしょう?」
「…それもそうか…」

そして結局、脳神経科を受診することに決めたため、その日のうちにマコさんが予約を取った。

翌日も会社を休み、マコさんに付き添われて、僕たちは県立の総合病院の門をくぐった。後でわかるのだが、これが本当の最悪の始まりだったのだ。僕は必死でこの状況を阻止しようとしていたが、そういう時に限って一切タツオ君の意識の柵を飛び越えることはかなわず、ただ成り行きに任せるより他なかったのである。


nice!(26)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 26

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

暗黒の二年間 35暗黒の二年間 37 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。