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暗黒の二年間 52 [音楽]

タツオ君は秋の夜道を歩いて帰った。道沿いに流れる小川のせせらぎに交じって、コオロギの鳴く高い声が、そこかしこから聞こえてきた。道々今日偶然にも蓮池さんに声を掛けられたことを、何か意味のあることのように考えながら…。


Nirvana Smells Like Teen Spirit 投稿者 stefdasse

家に着くと、タツオ君は宇宙科学研究所の前にぎょっとするものを見つけた。かつての僕そっくりの黒い猫が、まるでタツオ君の帰りを待っていたかのように、研究所の入り口の石段に座ってこちらを見ているのである。
(ついに幻覚まで見るようになったか…)
そう思った時、黒い猫は唐突に人語を喋った。それも日本語だ。
「やあ。帰ったね」
タツオ君は幻聴をかき消そうと耳をふさぎ、首を激しく横に振った。
「やめろ!」
「何をやめたらよいのかな?」
「お前が…、いるはずがないんだ!こんなところに!いや、もうどこにだっていやしないんだ!」
黒猫は石段を下りてタツオ君に接近してきた。
「私は実際にここにいるが?」
「来るな!化けて出たのか?」
「化ける?まあ確かにこれも化けているのに違いはないが、何か勘違いをしていないか?タツオ君」
「やめてくれ、お前は火葬になった筈だろう、もう灰になってしまったんだよ」
タツオ君の顔面がひきつり、みるみる蒼白になってゆく。
「火葬?ああそうだったね。君の友だちは不要になった合成身体を火葬にしてもらうと言ってたっけねえ」
「友だち…?君は誰なんだ?」タツオ君は耳をふさぐのをやめて恐る恐る問いかけた。
「こんな格好をしているとはいえ、私がだれか分からないなんて、君の能力は一体どこへ消えてしまったんだい?」
落ち着いて聞いてみると、かつての同居人の声ではないことに気付く。それよりも女性的な、高い声なのだ…。

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yu-papa

nice!有り難うございます^^
by yu-papa (2011-10-05 11:21) 

peach

★yu-papaさん、いつもありがとうございます。
by peach (2011-10-06 01:03) 

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