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暗黒の二年間 53 [音楽]

タツオ君の中で、ようやく忘れかけていたエイリアンとの交流の日々が蘇って来た。
「まさか…ロザリオ…?」
黒猫は笑った。猫が笑う?それは長年猫の姿をした僕と過ごしたタツオ君だからこそ見抜ける表情の変化なのだった。


Radiohead - High And Dry (Version US) 投稿者 nopulse

「いかにも。私だよ」
僕そっくりの黒猫はロザリオが宿った新しい合成身体なのだった。
「いつ来たんだ?」タツオ君は問いかけた。
「今日はついさっき。それ以前にも地球次元の身体なしで何度か来たが、一向に君は気付かなかったからねえ。こっちはお手上げだったよ」
「ピーチは…、ピーチの声も聞こえないんだ。あいつはどうなってしまったんだ?」
「それだ。それが問題なので私が来た。こんな身体でね。彼は救い難い闇の中へ落ちたよ…」
「落ちた…闇に…?」
「そうだ。現在ではそこで意識をなくしてしまっている。特別な装備なしでそこに落ちると、だんだんと闇と同化して自意識を失うんだ。従って彼はその魂ですら現在どこにも存在しないことになる」
「魂が死んだのか?」
「いや。魂は不滅だが、その個体性を失ってしまったんだ。こうなると自力では絶対に出て来られない」
「助けられるのか?君なら」
「…分からない。これまでやったことがないからね。だが理論上は出来る筈なんだ。かつて成功した例もある。それに、そのための幾何形体がすでに私の中に埋め込んである」
「幾何形体?前に君たちが僕に埋め込んだやつか?」
「いや、あれは地球人用だ。私たちはもっと微妙で複雑なものを使う。君に説明しても分からないよ。なにせ便宜上幾何形体と呼んでいるだけで、地球人の視覚で見たらすでに形と認識できるものではないからね。ともかくそれをわざわざ埋め込んで来たのだよ。未知のダイビングを楽しむためにね」
「冗談だろ」
「冗談だ。君にコンタクトが取れないと分かってから地球時間で10カ月だよ。全ての図形の埋め込みに10カ月かかったのだ。それで来るのが今日になってしまったんだが、その間私にも笑えない苦労があったのだということは理解してくれたまえ」

タツオ君は黒猫の姿でやってきたロザリオを研究所に招き入れた。

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