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暗黒の二年間 64 [音楽]

ハッチから広い通路に入ると、以外にも通路の両側に腰の高さくらいの葉の大きな植物がびっしりと生えているのにタツオ君は驚いた。水の流れる音が聞こえる。栽培のために循環させているのだろうか。とても宇宙船の中とは思えない。
「まるで公園かどこかを歩いているみたいだな」
「長旅には日常生活に似た環境が必要だからね」
「この巨大な船に僕たちしかいないのか?」
「そうだよ。必要な設備をつめるものがこれしかなかったのだ。かといって今回の場合大勢でおしかけてどうなるものでもない。私一人で来たというわけさ」
「失礼ながら私もおります」
通路の上部のほうから流暢な日本語が聞こえてきた。
「あれは?」
「あれはこの母艦の声だ。地球の日本語を完全にマスターしているから、なんでも命令してやってくれ」
「やあ、宇宙船君。はじめまして」タツオ君はどこにしゃべってよいかわからず、きょろきょろとあたりを見回しながら挨拶した。
「お会いできて光栄です。タツオ様」
「こちらこそだ。きみは…きみの本体はどこだ?」
「私の頭脳のことでしたら、それは現在タツオ様がいらっしゃる所から50メートルほど先にある統括センターです。今向かっていらっしゃるところです」
見ると通路の突き当たりにやさしい緑色の光が四角く灯っていた。
「あそこか」タツオ君は思わず小走りになった。
「タツオ君、宇宙船は逃げないよ」ロザリオが後ろから叫んだ。



緑色の四角はタツオ君が近付くと、自ら消えた。そして目の前には円形の部屋が広がっていた。中央に円卓のようなものがあり、数個の座席がそれを取り囲んでいた。円卓の水平な上部は一つのモニターになっていて、何かの機械らしき画像と、文字らしき羅列がそこに映っていた。
「ロザリオ様、すぐに段取りの確認に入られますか?」宇宙船が問いかけた。
「うむ、簡単に確認をしてから、お茶でも飲もう。そのあとゆっくり始めよう」
「承知いたしました」
「タツオ君、そこに掛けてテーブルのモニターを見てくれ」
「ああ」タツオ君は円卓のまわりの座席のうちの一つに腰を下ろした。
ロザリオは猫の身体のままテーブルに飛び乗り、僕を救出する方法の解説を始めた。

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