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黒い天使 [詩]

少し動くと暑いくらい、よい天気となった。

タツオ君たちはお彼岸で、お墓に備える花や、来た人にお返しする品物やお菓子などを買って、暗くなってから戻ってきた。タツオ君には両親がいない。早くに二人とも病気で亡くしてしまったのだ。だからこういった行事はみなタツオ君が中心になって準備する。マコさんもタツオ君の苦労をよくわかっていて、いろいろ気を配っている。

今日はタツオ君の面白い詩があったので紹介しておこう。今日みたいなよい天気には、みなよい気分になるものだが、彼は曇り空に現れる天使に会って、うれしかった日のことを書いている。


黒い天使

私と子供たちと、そして車いすに座った老婆が
庭で天使が来るのを待っていた
肌寒く
空は灰色に濁っている

しかしそんな日でも
何かありがたい日だった
曇った世界が
やさしく私たちをつつんでいた

いよいよ天使があらわれる
と老婆があんぐりを口をあけて空を見上げた

暗い世界の中では
曇り空でさえ目を細めるほどまぶしい

するとたしかに天使が舞っていた
肉の眼には見えないが
私たちのだれもが
天使を見た

ほんの束の間の出来事

そして黒い羽根が一枚
空からふわり
ふわりと舞いながら落ちてきた

私は羽根を拾い上げ
みんなと顔をみあわせた

「だれか、黒い天使の顔をみたかい?」

そんな幸せな曇り空の日だった



黒い天使というのは、一般的ではないが、実際にいる。白だから善で、黒だから悪だとかいうことはまったくない。単に天使と言って白い服を来て、白い羽を生やした人をイメージする地球的習慣があるだけだ。天使は自由に姿を変えることができる。人間がさまざまな服を着るのと同じように、天使も好きな服を着るだけだ。タツオ君は黒の良さをよく知っているので、黒い天使がやってきたのだと思う。

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