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黒猫の怪談 [音楽]

昨日とは違う、涼しい朝だ。薄い雲が時々太陽の光をさえぎる。
マコさんと子供たちは、居間でゆっくりした朝食をとっていた。穏やかな休日だ。



タツオ君が地区の道路愛護作業(この辺りでは道普請「みちぶしん」という)から帰って来くるなり言った。
「ピーチ、おまえそろそろやばくないか?」
「何の事?」
何の事だか本当にわからなかったので、真面目に聞いてみた。
「最近おまえみたいな黒猫が何匹もいるって、近所の人がみんな言ってたぞ。星(くに)の友達を呼んで花見でもしたんじゃないだろうな。」
「何匹も?」
「何匹も、だ。」
黒猫は僕のほかにこの辺りにはいない。故郷の仲間が来たとしても、わざわざ黒猫のいでたちで来るはずもない。思い当たるふしがなかった。考え込んでいると、タツオ君が真顔でこちらに流し目をおくりながら続けた。
「お前まさか、地球の猫と子供をつくったんじゃ…」
「怒るぞ。」
集中して考えようとしているところへ、くだらない突っ込みをいれるので本当にイラッと来て僕は言った。
「僕と猫とで、どれくらいの種の隔たりがあると思っているんだ。地球の猫が100万回生まれ変わったとしても僕にはなれないよ。それに…」
そう言いながら、ふと思いつくことがあった。もしかすると…。間違いない。
「わかった。こういうわけだ…、つまり、それは全部…、僕だ。」
そう言って、僕はタツオ君に理解が行くように、次のような内容の説明を試みた。

古い記事をご覧になった方は、僕が「時間というものは実在しない」と書いたのを記憶しておられるかもしれない。個々の瞬間はあくまでも、3次元的座標で示すことのできない「場所」なのだと。僕らは多くの地球人が体験している3から4次元から、さらに理解が深まった段階である、5から6次元を日常的に体験している。だから、地球人の見る世界と、僕らの見る世界とでは全く異なるのだ。こういう次元の異なる世界観を説明するほど難しいことはないのだが、あえて言うならば、僕たちには地球世界のすべては「静止して」見える。そして僕が世界を観察する時、例えて言うならば、ゆっくりと「時間」をかけて、ものごとをさまざまな角度から「同時に」見ることができる。それが地球人には瞬間の出来事だったとしても…。
つまるところ、ご近所の人たちは、最近ぼくがあちこちで「同時に」自然観察をしていたのを見たのだ。僕にとっては別々に観察しているつもりでも、彼の人たちにとってそれは、同時刻に、同じような黒猫がそこかしこに出没している、としか見えないというわけだ。どうしても、地球の言語でこの事象を説明するのは難しいが、できるだけ簡単に言ってそういうことなのだ。うっかりしていた。やはり地球的独自性には慣れ切らない部分がある。
それは地球の皆さんに、全く異なる生物の目で、例えばトンボの複眼を通じて世界を見てみろというのと同じことなのだ。

以上の説明にタツオ君は納得していた。そして言った。
「君たちの住んでる世界の広さには、全く度肝を抜かれるよ。どれだけ数学を勉強したらそこまで行けるんだ?」
「概念的な捉え方では、ここまで来ることはできない。マーカバでも無理だ。あれはあくまでも概念形成の道具に過ぎないしね。」
「やはり、それは『進化』なのか。」
「まあ、そういう気の遠くなるような言い方もできるがね。ある種の、積極的なアプローチなしの『理解』が自然に訪れる時、その時には、君もすでに変わっている筈だ。それまでは想像しよう試みることすら無駄だ。」

タツオ君は首を左右に振って、母屋の中に入っていった。
そして、この家で一番遅い朝食をとった。

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次なる進化の過程 [絵画作品紹介]

4月にしては大変暑い日となった。サキちゃんとサトくんは、マコさんの買い物中留守をあずかり、家中の掃除をした。子どもにとってもお手伝いをするのはうれしいらしく、夜になってもサキちゃんはずいぶんときげんがよかった。サトくんはつかれたのか、8時頃から居間で眠ってしまった。

017.JPG
▲無題


「このごろマーカバに乗れなくなったんだが…。」
研究所の机のまえで足を組んだ姿勢のタツオくんが、ふいにつぶやくように言った。
「基本的には君が体外離脱しない限り、マーカバには乗れない。」
僕はそっけなく答えた。
「体外離脱…、それもできない…、僕の体に何かしたか?」
「いや。」
「そうか…」
タツオ君は不満げに壁にかけた自分の作品を見詰めた。

実際に僕はタツオ君に何もしていない。だが言わなかったことが一つある。それはタツオ君がマーカバに乗れなくなった理由を知っているということだ。地球人のように、転生する星人には必ず指導霊が何体かついている。タツオ君の場合、やはりすぐれた霊が彼を導き、守護しているのだが、中でも最も強力な天使級の霊が、タツオ君の体外離脱を止めているのだ。マーカバに乗ろうと乗るまいと、体外離脱して赴く世界は、いかに酷似していようとも、その世界そのものではない。うすい層を隔てた形で垣間見ているだけなのだ。だから当の世界のほうでは、タツオ君が訪れたとしても、その気配は感じるかもしれないが、実際には何の影響も受けない。実際に世界とコミュニケートするまでになるには、ちょうど僕の体がそうであるように、肉体波動が光と同レベルにならないといけないのだ。地球ではこれをライトボデイと呼ぶ人たちがいる。タツオくんは、少年時代から霊眼が発達し、目を閉じていても外界が見える上、何の訓練もせずに、かなりの自由度で肉体を出たり入ったり、あるいは意識体のまま壁をぬけたり、空を飛んだり、高速で移動したりできた。これらは霊的な次なる次元へのスタートラインにすでに立っていることを意味している。だからこそ僕とロザリオは彼にマーカバを埋め込んだのだ。しかし、タツオ君ももうマーカバ遊びをしている段階でもないと、彼の指導霊は考えている。マーカバ遊びも、慣れてくると、TVを見るようなもので、慢性化し、傍観者の立場に甘んじてしまうようになる。というわけで、今回僕らはマーカバをタツオ君から取り上げもしなかったし、体を操作したりもしていないが、タツオくんの次なるステップのために、新たな訓練が開始されたので、あえて指導霊である天使に任せているというわけだ。

現にタツオ君は、考え込んでいるよりも行動していることのほうが多くなった。今までは瞑想状態でじっと動かなくなることが多かったが、今はひっきりなしに何かをしていて、夜になるとスイッチが切れたみたいに眠ってしまう。それでいいのだ。そうやって献身的に働くことで、進化の邪魔になる自我が消滅してゆく。すべての自我が消えてしまうと、より大きな自我と接続して、全く桁違いの大きな仕事を成せるようになる。

今日も、夜が山里を飲み込んでしまった。小さな虫の声が聞こえる。黒くうごめくものをよくみると、テラスを人差指ほどの長さのムカデが、身をくねらせて這っているのだった。

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