静かに光輝く海 1 [絵画作品紹介]
低気圧の影響なのか、快晴だというのに轟々と音をたてて風が吹き、明るく萌える木々を揺らめかせていた。地球にきて春にこのような天気に出会うのは初めてかもしれない。青空に拡散してゆく雲を見ていると、晩夏に台風が去ったあとのような、一瞬錯覚をおこした。
▲無題
「ロザリオが来ていたんだな。」
めずらしく包丁などにぎって、料理などしていたタツオ君が、その手を休めたかと思うと、だしぬけにこちらを振り返って聞いてきた。ああ、これは昨夜の僕のブログを読んだな、と思い、
「ああ、来ていたとも。」
とわざと何食わぬ顔をして答えた。
「会ったのか?」
「ああ。あの晩は僕も東京上空まで飛んで、ロザリオの母艦に乗り入れていたんだ。」
タツオ君は少し目を丸くするようにして言った。
「出かけていたとは気付かなかったな。」
「良く眠っていたからな。」
「そうだったかな。」
そう言いつつタツオ君は冷蔵庫に手をかけ、冷えすぎないよう野菜室に入れてあった350ml缶のビールを取り出して、一口飲んだ。
「なぜ会わせてくれなかった?」
「会いたいなんて一言も言ってなかったじゃないか。」
それきり、タツオ君はビールを飲み続けるだけで黙っていた。
風がまたゴオッと鳴り、山の緑が揺れた。
(つづく)
▲無題
「ロザリオが来ていたんだな。」
めずらしく包丁などにぎって、料理などしていたタツオ君が、その手を休めたかと思うと、だしぬけにこちらを振り返って聞いてきた。ああ、これは昨夜の僕のブログを読んだな、と思い、
「ああ、来ていたとも。」
とわざと何食わぬ顔をして答えた。
「会ったのか?」
「ああ。あの晩は僕も東京上空まで飛んで、ロザリオの母艦に乗り入れていたんだ。」
タツオ君は少し目を丸くするようにして言った。
「出かけていたとは気付かなかったな。」
「良く眠っていたからな。」
「そうだったかな。」
そう言いつつタツオ君は冷蔵庫に手をかけ、冷えすぎないよう野菜室に入れてあった350ml缶のビールを取り出して、一口飲んだ。
「なぜ会わせてくれなかった?」
「会いたいなんて一言も言ってなかったじゃないか。」
それきり、タツオ君はビールを飲み続けるだけで黙っていた。
風がまたゴオッと鳴り、山の緑が揺れた。
(つづく)