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暗黒の二年間 15 [音楽]

2009年8月───。
それからの僕たちは、一体化したのちに支障が出ぬよう入念に準備を進めていった。タツオ君は生活のリズムを守り、体調を整える一方で、僕とロザリオからの要請によって、会社を辞める段取りを考えていた。僕は僕で、抜け殻になった後の身体をどう処分してもらうか、またマコさんや子供たちを悲しませないようにするには、どうするのが一番よいのか、整理しながら考えた。




そして山里ではツクツクボウシが鳴きはじめ、秋の蝉と言われるのもうなずけるように、子供たちの夏休みも残り二週間となったころ、タツオ君はやたらと落ち着きがなくなっていた。
「どうした、タツオ君、何か妙にせかせかしているようだが?」
僕は僕の額の裏のスクリーンに映る、彼の心の中をあえて覗き見ようとはせず、そう尋ねてみた。
「いや、仕事が忙しくてな、9月いっぱいで退職することにしようと思うが、その前に引き継ぎの書類を前もって用意しておこうと思ってな。それで夜も遅いんだが…」
「会社にはもう申請したのか?」
「ああ、退職希望は直属の上司には言ってある」
「ではあとは辞表を出すだけだな」
「引きとめられているんだ…、だが来月早々ウォークインを実行するなら、お前の意識が浮上してくるよりずっと前に辞めておいた方がいいだろ。いくらお前でも俺の仕事は引き継げまい?」
「君の指示に従えば出来ないこともないが、苦労するね。地球の会社組織は、地球人の恐怖心が作り上げた煉獄だからねえ。僕とは縁遠いにもほどがあるという感じかな。」
「だよな」タツオ君はそう言って、僕に向かって欧米人がよくやる「お手上げさ」のポーズをしてみせた。
「だが、真意はそこにはないように見えるな」
「人の心をのぞくのはよせといっただろ」
「いや?あくまでも地球人レベルで観察しているだけだよ。それに完全に一体化してしまえば、お互いに隠し事なんてできないんだよ…」
「ああ、そうだろうね」タツオ君は不機嫌そうにそう言った。
「まあ、いいさ。話す気になったらいつでも相談してくれ」
僕はそう言って、決してタツオ君の心中を見たりすることはしなかった。なぜなら、こんな普通じみたやりとりさえ、もうじき出来なくなってしまうのだから…。


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peach

★みなさんnice!ありがとうございます。
ここのところ多忙で更新と皆様のブログへの訪問が
おくれています。ごめんなさい。近々まとめて拝見させていただきます!
by peach (2011-07-31 00:24) 

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