タツオくんの病気 [絵画作品紹介]
ここのところ暖かい日が続き、少しは気分も良いはずなのに、何もしないでいるタツオ君の尻でもたたこうと、作業机の前の椅子に座ってぼんやりしている彼に話しかけてみた。
「タツオ君。そろそろ君の新作がみたいものだな。」
タツオ君は一瞬ピクリ、とひじ掛けの上に置いた手の人差し指だけを動かした。そして僕の方に椅子を回転させて向き直り、言った。
「そろそろとは思っているけれどね。ついつい眠り呆けてしまう。僕は怠け者だからね。」
「きみの昔の作品を僕のブログで公開してもいいか?」
「良かった絵はみんな売れてしまって、写真すら残っていないだろう?」
そう言ってタツオ君はタバコに火をつけて足を組み、続けて言った。
「売れた作品の写真でも残っていれば、少しはうけるだろうがな。不精が祟ったな。故郷のエイリアンの暴露話でも書け。」
「また描けばいいことじゃないのか。歳をとってそんなに自信をなくしたか?何を怠けているのかねえ。それにきみが良いと思ってないものが他の人には新鮮な場合だってある。僕から見れば君が失敗だとか駄作だとか言っているものの方が、赤裸々で面白いがね。」
タツオ君はタバコの煙をため息とともに吐き出すと、さっきとは逆方向に回転しながら、
「勝手にしてくれ。」とつぶやいて、また机の上の方の宙を見つめた。
アトリエの中にはしばらく沈黙だけがあった。
タツオ君はまたもため息とともに、最後の煙を吐き出しながらタバコを揉み消すと、立ち上がった。そして壁際のラックに入れてある木版画の小品を数枚取り出して、一枚一枚眺めた。
「では、これなんかどうだ?」
そう言って渡してくれた数枚のうちの2点を今日は紹介しよう。
▲帰り途
▲北風の家路
タツオ君の作品は抽象絵画の方が多いのだが、たまたま渡してくれたのがこの版画の小品っだった。彼の作品には彼の意に反して意図的な一貫性は見られない。僕はそこが気に入っているのだが、彼自身はスタイルが定まらないのが発表しなくなった理由だとか言って、逃げている。描く気はあるのだ。今は気長に励まし続けるしかないと思っている。
「タツオ君。そろそろ君の新作がみたいものだな。」
タツオ君は一瞬ピクリ、とひじ掛けの上に置いた手の人差し指だけを動かした。そして僕の方に椅子を回転させて向き直り、言った。
「そろそろとは思っているけれどね。ついつい眠り呆けてしまう。僕は怠け者だからね。」
「きみの昔の作品を僕のブログで公開してもいいか?」
「良かった絵はみんな売れてしまって、写真すら残っていないだろう?」
そう言ってタツオ君はタバコに火をつけて足を組み、続けて言った。
「売れた作品の写真でも残っていれば、少しはうけるだろうがな。不精が祟ったな。故郷のエイリアンの暴露話でも書け。」
「また描けばいいことじゃないのか。歳をとってそんなに自信をなくしたか?何を怠けているのかねえ。それにきみが良いと思ってないものが他の人には新鮮な場合だってある。僕から見れば君が失敗だとか駄作だとか言っているものの方が、赤裸々で面白いがね。」
タツオ君はタバコの煙をため息とともに吐き出すと、さっきとは逆方向に回転しながら、
「勝手にしてくれ。」とつぶやいて、また机の上の方の宙を見つめた。
アトリエの中にはしばらく沈黙だけがあった。
タツオ君はまたもため息とともに、最後の煙を吐き出しながらタバコを揉み消すと、立ち上がった。そして壁際のラックに入れてある木版画の小品を数枚取り出して、一枚一枚眺めた。
「では、これなんかどうだ?」
そう言って渡してくれた数枚のうちの2点を今日は紹介しよう。
▲帰り途
▲北風の家路
タツオ君の作品は抽象絵画の方が多いのだが、たまたま渡してくれたのがこの版画の小品っだった。彼の作品には彼の意に反して意図的な一貫性は見られない。僕はそこが気に入っているのだが、彼自身はスタイルが定まらないのが発表しなくなった理由だとか言って、逃げている。描く気はあるのだ。今は気長に励まし続けるしかないと思っている。
「帰り途」の夕焼け色もいいですが
「北風の家路」が好きです。
道のむこうにあるのが大好きな「ちいさなお家」のようで嬉しくなりました。
ココロがあったかくなる版画です♪
by 日々季 (2009-02-18 22:45)
私も・・「北風の家路」 好きです。道の向こうの家で優しい奥さんが温かい食事を用意して待っている・・・寒くても風が強くても・・ひたすら歩く。。。
by エリザベート (2009-05-04 10:32)