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氷の朝に君は詠う [詩]

タツオ君の嫌いな寒い朝だ。
朝6時半。
「行ってくる」
まわらない口調でそう言って、車で出かけるタツオ君が、肉眼では見えなくなってからも、タツオくんの心の中は、僕の額の裏のスクリーンに映っている。今加速した、急ブレーキをかけた、仕事の心配をしている、何を描くか考えている、僕の星のことを考えている、家族のことを考えている、眠気に襲われている、など、すべてが伝わってくる。運転しながら今朝、タツオ君はこんな詩を詠んでいた。

「谷底に燃える火」

薄闇の中、ピンと凍てついた朝
僕の心臓までもが止まりそうに
わなないている
車を走らせる腕も、脚も、
青き死人のように硬直すれば

谷底で老婆が火を焚く
逞しき燃焼が
一瞬確かに、地球を炎で包んだ
幾千の時の皺が
紅にスパークする

あなたが勝者だ
その骨と、その皮の下にあるものは
岩を貫く雨水の意志

今、貫通したぞよ

達成の城に鎮座した、
誇り高き神々が笑う
暗い朝に

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