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暗黒の二年間 2 [音楽]

2009年の8月。例年通りのお盆の忙しさも過ぎ去り、タツオ君はやっと一息ついているところだ。
毎年の光景だが、真夏の太陽がギラギラ照りつけるこの家の庭では、サキちゃんとサトくんが家庭用大型ビニールプールに水を張って、きゃあきゃあ水しぶきをあげながら騒いでいる。僕らは輝く水の粒を見つめながら、のんびりとビールを飲んでいた。



「最近は絵の方も制作が順調なようじゃないか」
僕は別段タツオ君の方を見やるともなく、話しかけて見た。
「枚数は出来ないが、面白くはなってる」とタツオ君。
「相変わらず会社は大変なようだな」
「ああ、あいも変わらず馬鹿馬鹿しい茶番劇の連続だ。」
「辞めるわけにもいかないんだろうな」
「お前が働くか?下宿代がたまってるぞ」
「そいつは悪かったね。どこかで猫のアルバイトを募集してたら紹介してくれないか」
「あいかわらず口の減らない奴だ」
タツオ君は飲んでいたビールを一瞬、吹き出しそうになりながら言った。

そして、ミンミン蝉やらあぶら蝉、また近頃鳴き出したツクツクボウシなどの声にまじって、タツオ君がビールの缶を握りつぶす金属音が聞こえた。しかし中にはまだ沢山のビールが残っているらしく、金色の液体が溢れ、地面を濡らした。タツオ君は無言で子供たちの方を向いていたが、その目は何かここには存在しない、別のものを見つめていることが、手に取るように、僕にはわかった。


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