暗黒の二年間 20

そしてついに、太陽のそれと判別できる光が射してきた。
「はい、そろそろ洞内探索も終わりに近づいてまいりました。皆様お疲れ様です」
ガイドが説明に入った。
「実はこの洞内探索には、ある別の意味があるのです。それはこの不二洞を母親の胎内と考え、そこを通ってもう一度生まれ変わる、そういった、命を新しく頂きなおすという旅でもあるのだ、という考え方です。どうでしょう？みなさん、今日は生まれ変われましたでしょうか？」
綺麗にまとめたものだな、と思ってタツオ君は半ば聞き流していた。不二洞の外へ出ると、まぶしさと、伸びをしたくなるような開放感が訪れた。



「どうですか？今日は生まれ変われましたか？」
タツオ君はギクリとした。よく通る声でそう問いかけてきたのは剃髪の、僧侶のような面持ちの、先程のガイドである。いや、きっと実際にこのあたりの住職なのだろう。ガイドはまっすぐにタツオ君の目をのぞき込み、笑みを絶やさずに答えを待っていた。何故選りによって、タツオ君に「それ」を聞くのだろう？
「いや…、はい。これから生まれ変わるような気がします」
「ええ、ええ。そうでしょうとも。それでこそ、ここへ来た甲斐もあったというものです。さあ、みなさん上がっていらっしゃいました。山を降りましょうか…」
僧侶はにこやかにそう言うと、一行を引き連れて、来た道とは異なる、細い山道を下り始めた。

「生まれ変わる…」
タツオ君はそう心の中で繰り返した。今日ここへ来ようと思ったのも、運命のなせる必然だったのか。いや、単なる偶然だろう、タツオ君は少なくともそう思いたかった。そしてまだ今日は、子供たちに沢山楽しい思いをさせてやらなければならないのだから。

記憶に蘇って来た今後の僕たちの計画を、頭から振り払うように、タツオ君は一歩一歩を意識して歩いてみた。
「おとうちゃん、歩くの早いよ！」
サキちゃんとサトくんが駆け足で坂道を下って来た。
「ああ。ごめん」

そして、それから駐車場までは３人で手を繋いで歩いた。

白く美しい上野スカイブリッジが、眼下に見えた。

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コメント 6

nice&コメントありがとうございました。
とんぼ玉つくり、終わってしまいました。
来年、再び受講したいと思っております。
そうです。打ち上げは「ふらんす亭」でした。
by kawasemi (2011-08-12 09:05) 

お、レオン・ラッセルですね（>▽<）
4月に来日公演に行く予定でチケット取りましたが、
震災の影響で中止となりました・・・(>_<)
by マチャ (2011-08-13 11:38) 

★kawasemiさんありがとうございます。
今日、近所のギャラリーのバリ雑貨展に行ったら、
バリ島産のとんぼ玉を見つけました。
色が日本のものと違って、やはりアジアンチックというか、
日本の方がピュアな色合いのように感じました。
まあ技法的なものはわかりませんが、日本人なら避けるような
色の組み合わせをしていましたねえ。

by peach (2011-08-14 00:12) 

★マチャさんありがとうございます。
公演中止！そんな悲しいことがあったんですか！
残念ですねー。でも当時は被災地も日本も大混乱でしたからねえ、
止むをえなかったのでしょう…。
いや、それよりもマチャさんもレオン・ラッセルファンと聞いて
とてもうれしいです！
by peach (2011-08-14 00:19) 

なんせ、僕の大好きなエルトン・ジョンの師匠ですからね。
昨年二人が出した共演盤『The Union』は素晴らしいですよ。
by マチャ (2011-08-15 20:56) 

★マチャさんありがとうございます。
さっそくYou Tubeですがアルバム音源、NYC、L.A.他のライブ映像などを拝見しました。ほんとGreat!! ピアノ二台のバンド編成も豪華でした！エルトンの歌唱力しかり、レオン・ラッセルのカリスマじいちゃんぶりに、尚も感嘆。When Love is Dying とても荘厳な印象を受けました…。
by peach (2011-08-16 13:56)