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サキちゃんのこと [写真]

僕が地球に着陸したのはおよそ5年前で、その時僕の乗った宇宙船を見つけたのは、タツオ君ではなくてサキちゃんだった。その時サキちゃんはまだ小学校1年生。図書館で星座とか宇宙の本を読んでいるような変った女の子だった。ある春の日、サキちゃんは庭に出て夜空の星を観察していたんだけど、僕はそこをめがけて着陸した。もっともサキちゃんは「ピーチが墜落した日」と言って聞かないが。まあ無理もないんだけど。つまりスピードが速かったのでとても着陸には見えなかったってことらしい。サキちゃんの目にはちょうど隕石が大気圏に突入した時のような状態に見えていて、それがどんどん自分のほうに近づいてくるのだから、さぞかしびっくりしたことだろう。もちろん地面ぎりぎりで減速しているし、安全に着陸したのだが、まるで降ってきた隕石を装うかのように僕は宇宙船から出なかった。サキちゃんの次の行動を伺った。宇宙船は縮小化して小型のクッション程度になっていた。サキちゃんは宇宙船を両手で抱えあげ、「UFOが落っこちてきたよ~」と叫びながらダイニングテーブルまで運んで行った。着陸時の閃光に気づいていたママのマコさんとサト君もかけつけ、なんとか宇宙船をこじ開けようとしはじめた。こういう恐れを知らないあたりがこの家族の面白いところだ。しかしタツオ君が帰るまでは僕は宇宙船から出なかった。やはり地球外人種に対する直覚的、経験的な理解を備えた人間のいないところへ出るのは危険と判断したからだ。一時間後、仕事から戻ったタツオ君が「なんだ宇宙船か」とつぶやくと同時に僕はシールドをオープンにした。「猫だ!」と予想されつくした反応を跳ね返すべく、僕は言った。「猫ではありません。人間です。」そう日本語で。

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それから僕とこの家族が慣れ親しむには時間はかからなかった。僕はしゃべったし、二本足で立ったし、僕らの文化の話もした。特にサキちゃんには質問攻めにあったけれど、ともに宇宙船で旅行することで、自分なりに謎を解きほぐしていったようだ。あっという間の5年間だった。3歳だった小さなサト君も今は僕がサキちゃんと初めて会った時と同じ1年生だ。地球の時間は本当に早く流れる。

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次回はサキちゃんのエピソードの2回目を語ろうと思う。
では。


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