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灰色の朝 [音楽]

雨に濡れた庭で、タツオ君が背高く伸びた草を抜き取っていた。ひんやりとした、薄暗い朝だ。ウメモドキの木の下を通ったら、か細い透明な糸が顔にかかった。クモが朝食の準備をしていたのだった。



雨がまた降り出した。今日は天気は回復しそうもない。厚く垂れこめた雲の間を、一機のヘリコプターが気だるそうな音をたてて、通過していった。

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初夏の夜に [絵画作品紹介]

山里では、あちらこちらの田に水が入り、蛙たちがにぎやかに鳴き始めた。玄関先に出ると花の終わった藤が、幽霊のようにしなだれて、外灯に照らされていた。最終電車の過ぎゆく音が、踏切の音とともに聞こえてきた。空を見上げると、アンタレスが泣きはらした目をしばたかせて、こちらを見ていた。

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▲無題

僕がロザリオと話し合った、「今後の展開」という事態に、もうすでに世界は突入している。それでもまだ、この特異な状態の意味を理解できていない人も沢山いる。地球人にとって辛辣なトラウマとならぬよう、だいぶコントロールされながら、さまざまな事件が起こりつつあるが、今この時を機に目覚めるか、眠り続けるかは各人の自由にまかされている。

タツオ君は静かに胸の痛みを噛みしめ、それを浄化している。こんなに近くにいながら、僕はそれを見つめることしかできない。宇宙人はヒーローではない。ましてや神であるはずもない…。ただ、この時をタツオ君とともにいることが、僕に与えられた任務なのだ。タツオ君は実に美しい地球人だ。押しつぶされそうな辛苦にさいなまれながら、それが一切顔に刻まれず、まるで何の汚れも知らない天使のような顔をしていて、まさしく年齢は不詳という感じだ。僕は宇宙人として、進化へのメッセージを告げるために働いているという一面を持つが、むしろこの目の前にいる地球人は、僕が仕えるべき人なのではないかと、時々思う。実際に彼に会った人は、気持ちがとてもやすらぐという体験をしているが、彼自身はそのことには無頓着だ…。こういった天性のヒーラーが、地球の次なる次元への鍵なのだ…。

タツオ君に、ブログを読んでいる皆さんへ何かメッセージをくれと言ってみたが、今のところないそうである。まあ、無理に聞いても平凡なことを言うだけだろう。どんなに神々しく見えることがあっても、タツオ君はいつものタツオ君なのだから…。

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彼らがやってきた日 [絵画作品紹介]

今日はよく晴れた日であったが、昼ごろから風が強くなり始め、気温は次第に下がっていった。そして星の美しい夜となり、まるで秋のような、ものさびしい気配が山里を包んでいた。

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▲彼らがやってきた日

僕はタツオ君の家に滞在し、一緒に暮らしているが、タツオ君が外出しているときでも、彼の眼で見聞きしたこと、感じたことをモニタリングし、僕も同時に体験している。するとずいぶんと苦労していることが伝わってくる…。何と言えばいいのだろう、地球的にいえば、彼は損な役回りばかり引き受けている、かわいそうな人。理不尽な試練が多すぎるのだ。しかし、結果的にその仕事は、平均的な地球人のなし得ない、本質的な変革を引き起こす引き金となっているため、僕らの目から見ると最重要人物。神の目から見れば、最愛のわが子…。

タツオ君自身はどう感じているのだろう?心を読んでみよう。

「心が、胸が痛い…。神様、もう開放してくれてもいいんじゃないですか?僕は疲れました…。いつでもこの命を持っていってください…、今すぐにでも…。でも、この苦しみそのものが、あなたのプレゼントなのだとしたら…。OK、分かっちゃいるんです。痛みは痛みとして受け止めます。激痛すぎますけど…。もともと…、覚えてますよ…、僕が何故地球に生まれてきたかってこと…、そう、あの日、自分で決めました…、遊びに来たわけじゃない…。僕はちゃんとあなたの仕事をやれていますかね?あの人のように、僕にも成就できますかね?…ああ、まただ…。痛みが喜びに変わっていってしまう…。涙が出てきました…。うれし涙です…。これでまた明日も300%のパワーで生きろって言うんですよね…。神様、あなた何て残酷なんだ、いつも耐えられるぎりぎりのところまでしか僕を追い詰めないなんて…。どうしてですか…?自分で僕を崖っぷちに追い込んでおいて、いつも転落する寸前で助けるなんて…。本当にひどい人だ!」

と、まあこんな感じだ。実際には「…」の部分で神がタツオ君にコメントを返しているのだが、それは第三者である僕が傍受することを許されていない領域だ。

このブログでタツオ君の生の声を紹介することは少なかったと思うが、彼の過去の絵画作品の紹介とからめて、今後は載せても良いかと考えている。タツオ君の絵を見ることで、強い印象というか、作品によってはショックさえ受ける人がいるのは分かっていたが、それがどこから来るのか、ひとつの参考になればと思うからだ。

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眩い朝の記憶、視点の変化 [音楽]

眩い光に包まれた朝だった。これを「覆された宝石」と呼んだのは確か地球人だったのではないだろうか。風が吹き、山の鳥たちはみなそれぞれの言葉で喜びを語り、庭の隅の芝生の上では、小さなカミキリ虫が朝露を吸っていた。美しい朝の記憶は、それを所有する人の人生を一生支えるに違いない。私はこの朝のために生き続けるのだと…。



かつてこの宇宙を創った孤独な神は、自分以外の存在を体験するために私たちひとりひとりの中に分かれ、宿った。私たちが体験していることは、すなわち神自身が体験しているということに他ならない。そのことが常に見えていれば、人生に翻弄されることもないのだが…。ただ、心静かに観察してみよう。理解はそのまま、かつての自分自身の視点まで再び上昇する力だ。その時、宇宙の中に自分がいるのではなく、自分の中に宇宙がある、という体験が訪れる。孤独でありながら満たされており、すべてを持っている完全な自己。ふとひらめいて、宇宙遊びを始めたころの私…。

さあ、思いだすことができますか?

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睡眠、肉体、魂 [絵画作品紹介]

長い間雨が降った。晴れてきてもそれはやまず、一種異様な光景をつくり出した。雲の切れ間から光が射し、放射状のスポットライトのように山里を照らした。照らされた場所はまるで、祝福を受けた約束の地のように、安心しきった面持ちで輝いていた。暖かい雨に打たれながら、宇宙科学研究所の庭に立って山々を眺めていると、時折、小鳥たちがさえずった。

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宇宙科学研究所にある小さな一人掛けのソファが、僕のベッドだ。研究所に戻ってから、ついさっきまで僕は眠り続けた。その間肉体は硬直して動かず、サキちゃんやサトくんは、僕が死んだのではないかと囁き合っていた。タツオ君が、僕の魂が故郷へ帰っているだけなのだと、二人に説明したらしい。眠りは単に肉体が眠るのであって、魂には睡眠というものはない。むしろ睡眠は魂にとっては解放だ。そして死とは、そのもっと長いものであり、二度と同じ肉体には戻れないというだけの違いがあるだけだ。

タツオ君は一年くらい前だったか、まだマーカバも持っていなかったころ、体外離脱をしたまま戻れなくなってしまったことがあった。いや、正確には体外離脱して過去の自分の肉体に戻ってしまったのである。体を離れた魂は、時間の制約を失う。別の言い方をすると、時間の束縛から自由になるのだとも言える。すると、本人の意思がどうであれ、時間をスライドしていってしまうこともよくあることだ。タツオ君の場合、15歳くらいの、ちょうど頻繁に肉体から離れだした頃の、ちょうどお留守だった自分の体に戻ってしまったのだ。目が覚めてもはじめは気づかなかったという。なぜならそこは自分の暮らしていた部屋で、自分のベッドの上だったからである。だが、しばらくして妙な事に気がついて怖くなったらしい。ベッドの位置が違う、部屋に置いてあるはずのものがない、居間のほうから死んだはずの両親の声が聞こえてくる……。「昔の体に戻ってしまった!」事態に気づいたタツオ君は、戻らなければと焦りだした。「僕がこの体に居すわってしまったら、少年のころの僕の魂はどこへ帰ったらいいのだ?」すると急にひどい眠気が襲って来て、タツオ君はベッドに倒れこんだ。その眠気は尋常ではなく、とても抵抗しきれるものではなかった。タツオ君は眠りに落ちた。それと同時に、もとのタツオ君の肉体に目覚めることができたのだという。

このように、睡眠が魂を解放するのだ。みなさんは、睡眠は心身を休めるためのものだと思っていないだろうか?だが実際には、肉体は文字通り休むが、魂は解放されるため、より活発に飛びまわれるのである。魂が自由を獲得するのだ。これは魂にとって最大の喜びだ。しかし、生きている以上はまた肉体に戻らなければならない。だからこそ、眠りから覚めた時に一種のどうしようもない絶望感が伴うのである。また、肉体の中にあって魂を解放する方法もある。しかし、長くなるからその話はまたの機会にしよう。

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出張を終えて [宇宙のこと]

世間は連続休暇であったこの数日間、僕は長期出張で、実に過密なスケジュールで活動しなければならなかった。地球人たちが日常の生活から、非日常の生活へとシフトするときには、世界中のさまざまな次元における時空間に大きなエネルギーのうねりが生まれる。こういうとき、要所、要所で微妙な制御を行ったり、ちょっとしたイベントを仕掛けるのも僕らの仕事なのだ。

ロザリオの大型宇宙母艦は今日まで地球に停泊していた。詳しくここで明かすことは許されていないが、今地球人の多くが、非常に懸念している問題と深くかかわっている。地球人が問題視しているそれは、実は進化の鍵でもあるのだ。今というときは、地球次元の上昇を控えた微妙な時期だ。早すぎてもいけないし、遅すぎてもいけない。強すぎても、弱すぎてもならない。別の星人たちとの連携も必要だ。一日に地球を何周してもきりがないほど、仕事は次から次へとやってきた。今夜ロザリオを見送って、ひとまず通常のモードに戻れそうだ。やっとこのブログも更新することができる。

雨が降っている。この天候のタイミングも今回の仕事と大きな関係があった。絶妙のタイミングで降ってくれたと思っている。今回の僕たちの任務は成功だと思っていいだろう。とても疲れた。今は眠りたい。地球の重力の中では睡眠は不可欠だ。次にこのブログで皆さんにお会いするのは、その後で。まだタツオ君とさえ何も話していないのです。今夜は宇宙科学研究所に帰ったことを、ひとまず伝え、失礼します。おやすみなさい。

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